にのだん社会保険労務士事務所

人と人をつなぐ「たすき」となり

人事労務管理全般をサポートします

にのだん社会保険労務士事務所だより「たすき」令和4年1月号(No.26)

【令和4年 年金制度の法改正①】             

 皆さま明けましておめでとうございます。本年も「にのだん社会保険労務士事務所」を何卒よろしくお願い申し上げます。令和4年は人事労務に関係する法改正がたくさんありますが、年金に関しても大きな法改正が今年いくつもあり、その中で今回は法改正①として年金の「繰下げ請求の年齢延長」と「繰上げ請求に伴う減額率の変更」についてお伝えします。まず現在の年金制度のルールでは男性では昭和36年4月1日までに生まれた方、そして女性では昭和41年4月1日までに生まれた方については、条件を満たせば65歳前でも請求できる年金(いわゆる特別支給の老齢厚生年金)があります。そして65歳からは年齢に関係なく本来の年金を請求することができるのですが、今の制度では65歳からの年金請求を最長5年間(70歳まで)遅らせて、その分年金が増額となる繰下げ請求が可能です。それが令和4年4月からは昭和27年4月2日以降生まれの方であれば年金の繰下げ請求の開始年齢をさらに5年間延長して75歳からの請求が可能になります。1年あたりで言えば0.7%×12月の8.4%が増額となるため10年間請求を遅らせることにより84%アップと大幅な増額が可能ですが、競争でいえば10年スタートを遅らせて増額した年金で遅れを取り戻すことになるので、本来スタートに追いついてからは長生きすればするほど得になります。しかし人の寿命に絶対はないので、仮に75歳から10年後以降で得になる場合でも男性の平均寿命で言えば大きな賭けになるかもしれません。年金事務所では65歳からの年金を繰下げ請求した場合の年金見込み額と逆転年月(損益分岐点)を参考資料として入手することも可能です。自身の資料を見たとき長生きする目標として前向きに捉えることも良いかもしれませんが、寿命によっては繰下げ請求することにより損する場合があることも注意しなければなりません。そしてもうひとつの法改正である繰上げ請求による減額率の変更については、今のルールでは65歳からの本来請求を最長5年前倒しで繰上げ請求が可能となっていますが、繰上げ請求することで1月あたり0.5%の減額となり、仮に60歳で繰上げ請求すると0.5%×12月×5年の3割減額された70%の年金額が一生涯続くことになります。5年前倒しで年金を受給できるメリットがありますが、当然長生きすれば65歳から年金を請求する場合と比較して逆転となる年月以降は損になります。しかし令和4年4月からは昭和37年4月2日以降生まれの方であれば、繰上げ請求による減額率が0.4%に緩和されるので、仮に今のルールが適用される方が5年前倒しで繰上げ請求をしたことにより70歳代後半以降の受給が損になったパターンが0.1%の減額率緩和により逆転年月(損益分岐点)が80歳代前半にずれることも可能性としてあります。こちらについても人の寿命により結果が約束されるわけではありませんが、受給者にとってメリットが期待できる法改正に間違いありません。

【正月休みのメリット】

 私は過去にスーパーで勤務していましたが、年末商戦の勤務は激務であり、歌ではありませんが「もういくつ働くとお正月」と心の中で念じながら働いたものです。それでもこの年末を乗り越えれば「正月休みが待っている」とただその喜びのために気力で働きました。当時、日頃は連休が取れなくても正月休みが3日ほどあったので、年に1度気兼ねなく休むことができる幸せを感じたものです。しかし世間ではかなり昔からサービス業の元旦営業が定着し始め、営業すると客が集まるという結果から長らくこの習慣が当たり前になっていました。しかし最近耳にするのは元旦、または1日2日と正月に休業するお店が増えたというニュースです。これについては様々な理由が考えられます。ひとつはコロナの影響により、来客が集中する感染リスクを防ぐ目的が大きいかもしれません。またコロナ感染を警戒して正月にわざわざ出掛けることを自粛することも予想されるので過去のように元旦から営業するメリットが少ないことも考えられます。そしてもうひとつは数年前から言われている「働き方改革」の影響が考えられます。労働力人口の減少や働き手不足の理由から昔のような労働環境では人材が集まらなくなったのも事実です。今回のように多くの来客や大きな売上が期待できる正月営業を減らすことは店舗数の多い企業であれば数億円単位の損失になるかもしれません。しかし現場で働く人から見れば「正月に休めるのは本当にありがたい」と感じる方が多いのではないでしょうか?私がスーパーで働いていたときに大みそかまでクタクタになるまで働いてから元旦からいつものように勤務することを求められていたのであればきっと耐えられなかったと思います。休みがあるから頑張れる。交代ではなく皆で一緒に休めるから頑張ろうという気持ちがその当時あったと感じます。目先の損失は大きいかもしれませんが、雇用の安定化など優秀な人材を損失することを防げるほうがメリットは大きいかもしれません。ですから今回、正月休みにする店舗が増えるというニュースはサービス業を経験した私から見ても非常にうれしく感じました。

 さらに正月休みだけではなく日頃から「毎週水曜日は休み」など定休日を設けるというのも方法ではないでしょうか?こちらも当然売上は下がるかもしれませんが、定休日があることにより福利厚生面がアップして、人材の流出を防ぐ可能性や新たな人材を獲得しやすくなる金額では表せない効果が期待できるかもしれません。私自身、営業中に交替で休むのは非常に気を使い、店が営業していると休み中でも連絡が来て休んだ気になれないことを何度か経験しました。その点、定休日があることにより前日の商品売切りや定休日後に新しく並ぶ商品が増えることにより商品の回転が早いという印象を来店客に与えることができ、それが中長期的な売上アップや評判に繋がるかもしれません。コロナは様々な災難をもたらしましたが、状況と時代に合わせた新たな視点の働き方を考えさせることを加速化させるきっかけを作ったのかもしれません。

最後までお読みいただきありがとうございました